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せいしんびょうおぼえがき
精神病覚え書
「文藝春秋 第二七巻第六号」1949(昭和24)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,027 字 · 18 页
あらゆる抑圧を解放すれば、人間がどうなるか、分りきっている。色と慾。たゞ動物。それだけにきまっているのだ。
フロイドの方法は、理論的に、構成に巧みであるが、あそこから、決して実際の治療はでゝこない。
僕個人の場合であるが、患者としての僕が痛切に欲しているものは、たゞ単に健全なる精神などという漠然たるものではなく自我の理想的な構成ということであった。
大体、健全なる精神とは、何のことだろう。どこに目安があるのだろう。ある限度の問題かも知れないが、そんな限度は、患者としての僕にとって、問題ではなかった。
僕はその時、思った。精神病の原因の一つは、抑圧された意識などのためよりも、むしろ多く、自我の理想的な構成、その激烈な祈念に対する現実のアムバランスから起るのではないか、と。
僕が、恢復後、精神病者を観察して得た結論も、概して、そうであった。
僕が外来患者の診察を見学したとき、十人くらいは分裂病であったが、どうです、驚いたでしょう、という千谷さんに答える僕の言葉は、いゝえ、ということだけであった。
一人の患者をのぞいて、あとは極めて有りふれた、僕の見馴れた人達であった。