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ふんにょうたん
糞尿譚
火野 葦平
在线阅读火野 葦平《糞尿譚(ふんにょうたん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,974 字 · 99 页
手附でしきりと草をむしりつづけていた。赭ら顔を手でこすり、彼は家の前に立ちはだかって、くすぶった軒、土のはげた壁を、ひとわたり見わたし、字の見えなくなった表札を凝視して、今に見て居れ、今に見て居れ、と呪文のごとく呟いた。坂田村の豪農として何代も続いた小森家は彦太郎の代になって壊滅に瀕して居る。鬱勃たる事業慾を押えることが出来ず、彼は山林の一部を抵当にして信用会社から資本の融通を受け、糞尿汲取事業を開始した。従来は百姓達が馬車を曳いて市の方に出て行き、市内糞尿の汲取りをして居たが、自分達に肥料の必要でない時には中止する。市内に何人か居る商売人も全部馬車か牛車であって能率は捗々しくない。彼は桶及び二十荷を積めるトラックを一台購入した。汲取賃、肥料として農村へ売り捌く収益とを合算し、近代的方法に依って市民の大半を得意に取り得るは必定であって、必要諸経費を差引いても、相当の剰余金のあることは確実である。彼は意気揚々として、周囲の人々の冷笑の中に開業した。ところが始めてみると、彼の算盤は片端から違算にぶっつかった。第一、営業の許可問題でごたごたした。市中にはトラックを何処にも入れることの出来ないために、桶用リヤカアを作り、汲取った桶を一定の場所に集めておいて、トラックを廻して積み込む外なく、一ヶ所ではトラックにし