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こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
「新青年」1935(昭和10)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页
実は奥方様、あの男は、カタリナ皇后から、アレウート号の船長に任命されて、このラショワ島にある黄金郷の探検を命ぜられたのです。あの黄金都市の輝きを、いまも私は、はっきりと見たのでしたわ」
その一言で、はしなく三人の目が一つになった。
それは、驚異などという言葉では、とうてい言い表わせない、むしろ恐ろしい、空虚のように思われた。ことに、横蔵の眼は爛々と燃えて、今にも全世界が、彼の足下にひれ伏すのではないかと考えられた。
フローラは、言葉を次いで、
「つきましては、最初からの事を申し上げねばなりませんが、グレプニツキーの話によりますと、それが、一七四一年六月のある朝だったそうでございます。この島の南々東二カイリの海上を進んでおりますうちに、聖ピヨトル号の甲板にいた、ベーリングと父が、はっきりとこの島の上に、円い金色の幻暈を見たのでした。
それは、海霧の中を、黄色い星の群れが、迷いさまよってでもいるかのように、その金色の円盤が、島を後光のように覆うていたとか申します。そして、ベーリングはただ一人小舟を操って、そのころは無人島だった、この島に上陸したそうですが、その結果がどうであったかということは、とうとうもどってからも、聴かれなかったとかいうそうでした。