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こうもうけいせい

紅毛傾城

小栗 虫太郎

「新青年」1935(昭和10)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页

青空文庫

……打ち沈めてくださいまし。それでないと、今にきっとこの島には鳥一羽、寄りつかなくなるに決まってますから」

次第に調子を高めてきたフローラは、最後の言葉を、つんざくような鋭さで叫んだ。

すると、応と答えた横蔵が、撥を取り上げ、太鼓を連打すると、軍船を囲んだ小舟からは異様な喚声があがり、振り注ぐ火箭が花火のように見えた。

そうしてしばらくの間、アレウート号の炎は、いろいろな形に裂け分かれて、真紅の模様を、輝く水面に刻み出していたが、やがて波紋が積もり重なり、柔らかな鏡のようになると、わずか突き出た檣の先に、再び海鳥が群がりはじめた。

こうして、フローラを忌まわしくも追い続けた悪霊の船、悪疫を積んだアレウート号は、再び水面に浮かぶことがなかったのである。

その間、ちらつく火影の中で、紅琴はフローラの物語を聴き続けていた。

「でございますもの。私がいつか、あの船を逃れよう逃れようとしたって、無理ではございませんでしょう。ところが、そうこうともだえているうちに、計らずも今朝、黄金郷の輝きを望見したのでございます。

それは、白夜がはじまろうとする白っぽい光の中で、島の頂きを覆う金色の輪が、暈のように広がり縮んでいて、それは透かし絵の、影像のように見られたのでした。