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こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
「新青年」1935(昭和10)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页
黄金郷の秘密
翌朝になると、果たして慈悲太郎は冷たい亡骸と変わり、胸には、横蔵と異ならない位置に、短剣が突き刺さっていた。
その日の午後、フローラは、しょんぼり岬の鼻に立っていて、いまにも氷の下に包まれるであろう、死者のことを思いやっていた。それは、村々の外れに淋しく固まっている共同墓地の風景であった。
しかも、その時ほど、自分の宿命と、罪業の恐ろしさを、しみじみ感じたことはなかったのである。彼女は、靄の中に隠されている、ある一つの、不思議な執拗な手に捕らえられているのだ。その明証こそ昨夜まざまざと瞳に映った、父の腕ではないか。
そして、最初横蔵の鏡に映った片眼が、もしそうであるにしても――と、フローラは不思議な自問自答をはじめた。
というのは、はしなくその時の鏡が、古びた錫鏡だったのに気がついたからである。
元来錫鏡というのは、ガラスの上に錫を張って、その上に流した水銀を圧搾するのであるから、したがって鏡面の反射が完全ではなく、わけても時代を経たものとなると、それは全く薄暗いのである。すると、横蔵の背後に置いた一つが問題になってきて、もし、その角度が、光線と平行な場合には、当然水銀が黝んで見えるはずであるから、正面に映った横蔵の眼に、暗くくぼんだような黝みが映らぬとも限らないのである。