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なっとうかっせん
納豆合戦
菊池 寛
「赤い鳥」1919(大正8)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,774 字 · 8 页
「おい、お婆さん、納豆をおくれ。」と言いました。すると、お婆さんは口をもぐもぐさせながら、
「一銭の苞ですか、二銭の苞ですか。」と言いました。
「一銭のだい!」と吉公は叱るように言いました。お婆さんがおずおずと一銭の藁苞を出しかけると、吉公は、
「それは嫌だ。そっちの方をおくれ。」と、言いながら、いきなりお婆さんの手の中にある二銭の苞を、引ったくってしまいました。お婆さんは、可哀そうに、眼が見えないものですから、一銭の苞の代りに、二銭の苞を取られたことに、気が付きません。吉公から、一銭受け取ると、
「はい、有難うございます」と、言いながら、又ヨボヨボ向うへ行ってしまいました。
吉公は、お婆さんから取った二銭の苞を、私達に見せびらかしながら、
「どうだい、一銭で二銭の苞を、まき上げてやったよ。」と、自分の悪戯を自慢するように言いました。一銭のお金で、二銭の物を取るのは、悪戯というよりも、もっといけない悪いことですが、その頃私達は、まだ何の考もない子供でしたから、そんなに悪いことだとも思わず、吉公がうまく二銭の苞を、取ったことを、何かエライことをでもしたように、感心しました。