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すばらしいきねんひん

素晴しい記念品

大倉 燁子

「探偵文学 二巻四号」1936(昭和11)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,593 字 · 4 页

青空文庫

フランスの片田舎に一人の科学者があった、年はもう五十に近いが独身で、兄弟もなく、友達もなく、淋しい孤独生活であった。彼の唯一の趣味は絵を描くことである。最初は静物を、後には人物、ことに若い女ばかりを描くようになった、が、不思議なことに彼に雇われて行ったモデル女はそれぎり姿を消してしまい、紹介者のところに戻って来ないのだ。初めは気にも留めなかったモデル紹介者も、それが五人六人となると少し不審になって、内々様子を探ってみたが別に変ったこともない。しかしどうも気になるので知り合いの刑事に密告した。それから間もなく家宅捜査が行われストーヴの中から燃え残りの薪を引き出すと、それに一つまみほどの長い女の髪の毛が、からみついていた、それ以外は何の発見も得られなかったが、厳重に訊問した結果、自白したところによるとモデル女を自分のものにした揚句、肉体を溶して薬品につくったり、絵具につくったりしていたが髪の毛だけはどうしても溶けなかったので焼き捨てていた。彼は平然として、

「私の描いた絵を見て下さい、実に不思議な色彩を見出すでしょう? 絵は彼女自身の肖像であり、彼女の肉体を溶したもので描いてやったのです、何という素晴しい記念品ではありませんか」