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けっこん

結婚

中 勘助

「朝日評論 第一巻第一号」朝日新聞社、1946(昭和21)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,520 字 · 11 页

青空文庫

事情は間氏から先方のお父様にだけ話してさりげなく式を進める。人数は時節がら、また私の流儀に従って凡て二十人ばかり、内輪の中の内輪だけだ。披露の宴で私はあらゆる種類の酒を次つぎと飲んでよほど元気づいた。主賓である先方の伯父さんが卓子の向うから

「山本大将はお父さんが五十六の時のお子なので五十六とつけられたということですがあなたはなんとおつけになります」

といったので

「は 五十八とつけます」

と答えたら皆が一度に笑った。それまでの堅苦しさがそこでほぐれたような気がした。宴後休憩室でも私は平静に人たちと談笑した。お父様はあとで 見ていてたまらなかった といったそうだ。

文枝さんに自動車で送られて家へついた時にはじめて事情を知った和子は茶の間の隅で初子さんに慰められながら泣いた。間もなく梶井さんや留守をお願いした人たちが帰り、家政婦さんと女中さんが部屋へ寐にいったあとそちらとは家の反対の端にかけ離れた奥で和子は次の間に、私は座敷に屍体と床を並べて寐た。平静ながら不思議な厳粛な気もちだった。遺骨にし、葬式をすませ、位牌だけになってからも座敷に飾り壇のあるあいだ四十九日私たちはこれを続けた。