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ぜったいむじゅんてきじこどういつ

絶対矛盾的自己同一

西田 幾多郎

「思想 第202号」1939(昭和14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,000 字 · 99 页

青空文庫

単に与えられたものというものは、抽象概念的に考えられたものに過ぎない。我々は身体的なるが故に、自己矛盾的であるのである。行為的直観的に我々に臨む世界は、我々に生死を迫るものである。

絶対矛盾的自己同一の世界の個物として、我々の自己は表現作用的であり、行為的直観的に制作的身体的に物を見るから働く。作られたものから作るものへとして、我々は作られたものにおいて身体を有つ、即ち歴史的身体的である。斯くいうのは、我々人間は何処までも社会的ということでなければならない。ホモ・ファーベルはゾーン・ポリティコンであり、その故にまたロゴン・エコーンである。家族というものが、人間の社会的構成の出立点であり、社会の細胞と考えられる。進化論的に考えれば、人間の家族も動物の集団本能の如きものに基くとも考えられるであろう。ゴリラが多くの牝を連れて生活しおるのは、原始人の生活と同様であるといわれる。しかしマリノースキイなどのいうように、動物の本能的集団と人間の社会とは、一言にいえば本能と文化とは根本的に異なったものでなければならない(Malinowski, Sex and Repression in Savage Society)。