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ぜつえんたい

絶縁体

豊島 与志雄

「世界」1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,752 字 · 38 页

青空文庫

「いや、葬式がどうこうというのではありませんよ。そりゃあ、あなたの娘さんだから、どういう葬式をなさろうと、あなたの自由です。けれども、先程から何度も申したように、亡くなられた当時、わたくし共へも、それからまたほかへも、一応は通知して頂くのが、世間の儀礼というものではありますまいか。そして仏さまにもお別れをさせ、葬儀にも立ち会わせる、それがつまりは、仏さまへの供養ともなり、御近所の方々への義理を立てることにもなるのです。あなたのお話を承っておりますと、ただ御近所の方々に任せっきりで、わたくし共はまるで無視されたとしか思えません。そういう御料見ならば、それでも結構、わたくし共でもそういう料見をすえましょう。然し、弘子さんは可哀そうでした。どこへも、後になってからしか知らせなさらなかったのですね。縁故の者で、葬儀に立ち会った者は一人もなかったのですね。わたくしはちょっと旅行していまして、帰って来ると通知状が来ていました。しかも、十日も過ぎてからの、謂わば一片の報告にすぎません。家内はふだん御交際がなかったものですから、思い惑っていました。わたくしは外の用事を差し置いて、駆けつけて来たのですが、もう遺骨もない始末じゃありませんか。