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ぜつえんたい

絶縁体

豊島 与志雄

「世界」1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,752 字 · 38 页

青空文庫

どうにかしなければなるまい、と私は考えた。

考えてるうちに、ふと思い当ることがあった。板塀とか竹垣とかいうものは、それが無くては都合がわるい方で作るべきなのかも知れない。往来に面してる場合ばかりでなく、家と家との間でもそうなのだろう。そして、市木さんが私の家の囲いを見て廻ったのも、或は、あの竹垣の作成を私の方へ譲るという謎だったのかも知れない。いっそのこと、市木さんに直接話してみるのが、早道だった。

折を見て私は、八手の茂みをくぐって市木さんの庭へ行き、そこの縁側から声をかけてみた。室内から返事があって、暫く待つと、市木さんが出て来た。硝子戸を開けて、市木さんがそこに座布団を出したから、私は腰を掛けた。縁側には陽が当っていた。

さて、どういう風に話しだしてよいものか、私はちと弱った。市木さんが変人だということを聞いていたし、額が少し禿げ上ってる大柄な顔立ちと、肩まで垂れさがってる長髪とに、なんだか威圧される気持ちだった。簡明に打ち明けるのがよさそうだった。

「実は、お宅との間にありました、あの竹垣のことですが……。」

「ははあ、あれですか、取り払ってさっぱりしましたなあ。