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しばられたあひる
縛られたあひる
小川 未明
「児童文学」1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,532 字 · 9 页
はたして、乞食の親子は、ぶなの木の根もとで火を焚きました。青い煙が、幹を伝い、小枝を分けて、冴えた、よくふき清めたガラス張りのような空へ上ってゆきました。このごろ、ぶなの木は、春の近づいたせいか、空を見ると、去年の夏、飛んできたかわらひわのことを思い出すのでした。かわらひわは、毎日のように、どこからか飛んできて、枝に止まって、いい声でさえずりをきかせたり、また、遠い旅の話などをきかせてくれたのでした。そして、別れる時分に、さも名残惜しそうにして、
「また、来年の若葉のころには、きっときますから、どうぞ、みなさんお達者でいてください。」といったのでありました。
三本のぶなの木は、そのかわらひわのいったことを思い出すにつけ、こんな乞食が、ここへやってきたのでは、たとえ自分たちが、無事でいても、かわらひわは、おそらく、二度とここへはきて止まることもあるまいと考えたのでありました。それは、なんという情けない、また悲しいことだったでしょう。日が沈んでから、その日も募り出した、北風に、木は、昨日にもまして悲しい声で唄をうたったのであります。
二、三日後の、暮れ方のことでした。