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おだのぶなが

織田信長

坂口 安吾

「季刊作品 第一号」創芸社、1948(昭和23)年8月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,950 字 · 36 页

青空文庫

彼の女房は安井と云って、信長が大変目をかけてくれる才女だ。女房のおかげで、亭主の方も信長の覚えがめでたいようなことでもあるから、コレコレ、すぐに髪を結い拵え衣服をとゝのえて、殿のお帰りを待ちなさい、これこれこういうことで、いよいよ天下は信長公のものとなった、この包みが、ありがたい綸旨二通と奉書なのだ、こうしては、おられん、さあ、いそいで、支度々々、めでたい、ありがたい、と云って、むやみに一人でテンテコ舞いをしている。

信長が戻ってきた。いつもの通りさッさと湯殿へ行く。道家がそれを追いながら、実はこれこれにて、朝廷の使者が見えております、アヽ、そうか、と云って、信長は風呂の中へとびこんで、湯ブネから首をだして、勅使のことを色々と質問し、新しい小袖の用意はあるか、ございますとも、それはもう用意に手ぬかりはございません、せっかく天皇様が日本国を下さると仰有るのですから、と、道家は日本国をもらった、もらった、とウワゴトみたいに言っている。それで信長もお風呂でバチャバチャ水をはねちらして、上キゲンであった。

然し、別に日本国の支配を命じるというような、たいした綸旨ではなかった。