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よしつねのむすめ
義経の女
山本 周五郎
「少女之友」実業之日本社、1943(昭和18)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,735 字 · 8 页
とかたちを正して云った。
「わたくしを鎌倉へやって下さいませ」
有綱はおどろいて眼をみはった、千珠は良人のおどろくさまをかなしげに見あげながら、「このたびのことは千珠ひとりにかぎり、お屋形にはなんのおかかわりもないのでございますから」
「ばかなことを云ってはいけない」
「いいえお聞き下さいまし」
千珠はしずかに押し切って云った、「鎌倉の大殿(頼朝)が父伊予守をお討ちあそばしたのは、御自分の小さなおにくしみだけではございません。平氏は武家でありながら、都に住み、公卿ぶりに染まって、あらぬ栄華に耽ったため、亡びました。大殿にはそれを前車の戒めにあそばして、征夷の府を鎌倉に置き、武家が天下の守護人であること、身を質素に持し、倹約をまもり、心をたけく男々しく、武士らしき武士となることをきびしくお示しあそばしました」
父のことを女としてあげつらうのは申しわけないがといって、千珠は眼を伏せながらつづけた、「父伊予守はもと京に育ち、また木曽殿(義仲)の変には都にあって、内裏へものぼり、公卿がたとも往来して、おふるまいもとかく華美になりました。そのうえ合戦のみごとさは世に隠れもなく、下人の末までがはなやかに評判をするありさまでした、これは大殿の、武士はあくまで質実剛直でなくてはならぬ、武家の本分をまもって世の模範となれという