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ろうふうふ

老夫婦

黒島 伝治

1925(大正14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,957 字 · 27 页

青空文庫

「うっかり途中でやめさしたら、どっちつかずの生れ半着で、これまで折角銭を入れたんが何んにもなるまい。」

「そんじゃ、お前一人で働いてやんなされ! うらあもう五十すぎにもなって、夜も昼も働くんはご免じゃ。」

「お、うら独りで夜なべするがな。われゃ、眠むたけれゃ寝イ。」為吉はどこまでも落ちついて忍耐強かった。朝早くから、晩におそくまで田畑で働き、夜は、欠かさず夜なべをした。一銭でも借金を少くしたかったのである。

おしかはぶつ/\云い乍らも、為吉が夜なべをつゞけていると、それを放っておいて寝るようなこともしなかった。

戸外には、谷間の嵐が団栗の落葉を吹き散らしていた。戸や壁の隙間から冷い風が吹きこんできた。両人は十二時近くになって、やっと仕事をよした。

猫は、彼等が寝た後まで土間や、床の下やでうろ/\していた。追っても追っても外へ出て行かなかった。これでも屋内の方が暖いらしい。……大方眠りつこうとしていると、不意に土間の隅に設けてある鶏舎のミノルカがコツコツコと騒ぎだした。

「おどれが、鶏をねらいよるんじゃ。」おしかは寝衣のまま起きてマッチをすった。「壁が落ちたんを直さんせにどうならん!」