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ろうこうふとでんとう
老工夫と電灯
小川 未明
――大人の童話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,017 字 · 6 页
出して、滴り流れている、清らかな水のほかには、なにもなかった。けれど、これでたくさんだという気になったのであります。
なんという単調で、変化のない光景であったでしょう。よくも、電燈が、こうして、同じ光景を照らし、また見つめているものだと考えられました。しかし、老工夫は、休息を欲していた。自分は、もうなんにも刺戟を欲しない。またたいした欲望もない。ただ、平静にじっとしていたい。この電燈が、自分であったら、自分は、どんなに幸福であろう……と思ったのでした。
老工夫は、まだぼんやりとして、電燈を中心に、周囲の光景をながめていました。すべてが、じっとして、動かない。ただ、動いているものは、水の流ればかりでした。彼は、いま、光を受けて、銀か、水晶の粒のように断層から、ぶらさがって、煉瓦に伝わろうとしている水の雫を見ていました。
刹那、どうしたことか、彼は、この光景とは、なんら関係のない、べつな光景が目に浮かんだのであります。
広々とした畑が、水の雫の中に宿っていました。しかも、無限に、深く、深く、遠く、遠く、その雫の中に拓けていたのです。その畑には、真っ黄色な、かぼちゃの花がいくつも咲いていた。