轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

運送会社の集荷係が宅扱いの最後の梱包を運びだすと、この五年の間、宇野久美子の生活の砦だった二間つづきのアパートの部屋の中が、セットの組みあがらないテレビのスタジオのような空虚なようすになった。いままで洋服箪笥のあった壁の上に、芽出しの白膠木の葉繁みがレースのような繊細な影を落しているのが、なぜかひどく斬新な感じがした。

管理人の細君が挨拶にきた。

「おすみになりましたか」

「ええ、あらかた……ながながお世話になりました」

「宇野さん、和歌山なんだそうですね」

「ええ、和歌山よ」

「お郷里へお帰りになるんだって。テレビであなたの顔を見られなくなると思うと、さびしいですわ」

「こんなふうに休んでばかりいるんじゃ、ろくな仕事はできないでしょう。ほうぼうへ迷惑をかけるばかりで……二、三年、郷里でのんきにやって、また出なおしてくるわ」

「焦っちゃだめよ、ね。仲さんみたいなことになるのは不幸すぎるわ」

「あたしはだいじょうぶ」

「じゃ、お大切にね。元気で帰っていらっしゃい」

「ありがとう」

管理人の細君がひきとると、久美子はボール・ペンをだして、戦争の間、疎開していた伊那の谷の奥の農家へハガキを書いた。