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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

「それはまあ、どうしたって」

苦笑いしながら久美子は呟いた。

どうしたって父娘だとは見てくれまい。大池の生活に密着した、抜きさしのならない関係にある女だと、解釈したこったろうから、ここへ話をもちこんでくるのは当然だ。

長すぎるピジャマのズボンとガウンの裾を、いっしょくたにたくしあげながら二階から降りると、久美子は玄関に出て管理人がやってくるのを待っていた。

いい話だろうと、悪い話だろうとかまうことはない。うるさい絆から解き離されるためにも、どうせ聞かなければならないのなら、一分でも早いほうがいいのだ。

湖水につづく林の中の道から管理人が出てきたのを見るなり、久美子は玄関のテラスから問いかけた。

「どうしたんです?」

実直そうな見かけをした中年の管理人は、テラスの下までやってくると、上眼で久美子の顔色をうかがいながら、低い声でこたえた。

「ちょっとお知らせに……」

「なんでしょう」

「ごぞんじだと思いますが、東洋銀行の事件を担当している捜査二課の神保係長と、捜査一課の加藤刑事部長が、いま伊東署で打ち合せをしているふうなんで……」

自分に関係のあることだと思えないので、久美子は自分でもはっとするような冷淡な口調になった。