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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页
「つまり、死体が揚らないだろうということなのね」
石倉は重々しく首を振った。
「アクア・ラングなんかじゃ、仕様がない。本式の潜水夫を入れないことには、どうにもならないというこってす」
久美子はさり気なくたずねてみた。
「吸込孔って、どんなぐあいになっているものなの?」
「湖盆の深所まで五十メートル……そこから孔になって更に百メートル……その先、どれほど深いか測ったことがありません」
捜査主任は、湖底平原の吸込孔は、陥没湖の可容性地層が溶けてできるものだから、この湖に吸込孔はあり得ないといった。言われてみれば、そのとおりで、火口状の凹地に湛水した火口原湖に、水の湧く吸込孔などあるはずがない。石倉がなんのためにありもしない吸込孔を、あると言い張るのか理解できなかった。
石倉の選んだバンガローは、キャンプ村の端れにあって、船着場のそばに一つ離れて建っていた。窓のない柿葺の小屋で、二坪ほどの板敷に古茣蓙を敷いてある。入口の扉は乾反って片下りになり、どうやってみても、うまくしまらなかった。
一時間ほど湖畔を散歩して、バンガローへ帰ると、夕食が届いていた。罐詰のシチュウとミートボール……昨夜、ロッジで夕食に出たのと、おなじものだった。