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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

なぜ、そんなところへおく」

「大池の細君が、どんなことがあってもロッジに入れないと突っぱるもんでね……といって、コンクリートの床に寝かされもしない。マトレスの古いのを一枚借りだすのがやっとのことでした」

「医者がついているのか」

「医者も救急車も、一時間ほど前にひきあげました」

主任の額に暗い稲妻のようなものが走った。

「いい加減なことをするじゃないか。看護もつけずに放ってあるのか」

「大池の伜がつきっきりで看ています。現在、築地の綜合病院でインターンをやっているんだそうで……」

「大池の伜というのは、いったい何者なんだ。そんなやつに共犯を預けて、安心していられるのか。裏でどんな軋りあいになっているか、わかったもんじゃない」

「部屋長さん、その点なら、心配はいらないように思いますがね」

木村が笑いながらいった。

「大池の伜は、あの女に惚れているらしいですよ。たいへんな気の入れかたでね、舟からあげたときなどは、涙ぐんでおろおろしていました……父親の色女に惚れてならんという法律はないわけだから……」

主任が閉てきるような調子でいった。

「畑中君、石倉という管理人の経歴を洗ってくれないか」