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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

キャンプ・ファイヤーを囲んで讃美歌やボーイ・スカウトの歌を合唱している。

降るような星空の下、釉薬を流した黒い湖の面に、ちりばめたようにキャンプ・ファイヤーの火の色がうつり、風が流れると、それが無数の小さな光に細分され、眼もあやにゆらゆらとゆらめきわたる。

久美子は子供たちの合唱を聞くともなく聞きながら、空の中にある満々と張りつめたもののたたずまいをぼんやりとながめていたが、そのうちに、なんともつかぬ嫌悪の念に襲われて、枕に顔を伏せた。

昨日まで、あんなにも心を惹かれた湖の風景が、なぜか嫌らしくて見てやる気もしない。安らかな方法で自殺しようなどと、あてどもないことを考えていたが、そんな方法はありえないことを身をもって学んだ。父のように肝臓癌で阿鼻叫喚のうちに悶死するにしても、たぶん、もう二度と自殺しようなどとは考えないだろう。

久美子は自嘲するようにニヤリと笑った。

「たいへんなことになった」

自殺という作業を完成しようと、それだけにうちこんできたが、その目標が失われたので、することがなくなった。古びた生活の糸で、昨日と明日の継ぎ目を縫いつづけなくてはならない。