轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かんぞうせんせい
肝臓先生
「文学界 第四巻第一号」1950(昭和25)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,194 字 · 46 页
最も熱烈な愛国者の一人であった女将の痛憤や、いかに。身にうけた侮辱の数々を遺書に残して、彼女は即夜、なつかしのふるさとの海にとびこんで死んだ。
肝臓先生に遺書一首。
おみなごの身にしあれば怒りに果てむ
肝臓先生は負けたまはず
その遺作に山吹の花が添えてあった。花は咲けども実のらぬ悲しさを伝えたものであろうか。それをいだいて、先生は慟哭した。
折しも女将の葬儀がこれから始まるという時であったのである。常の日ならば、この町に稀な盛葬であるべきものを、彼女の慈愛をうけた多くの人々は、あるいは戦地に、あるいは工場に去り、軍を恨んで身を果てた女傑の最後を葬う人は少かった。
ボロシャツ一枚、水にぬれて駈けこんできた女があった。遠く沖にかすむ小島から、先生の往診をもとめて小舟を漕いできた娘であった。彼女の父が病んでいるのだ。すでに数日食物をとらず、全身黄色にそまり、痩せはてて明日をも知らぬ有様であるという。
先生は嗟嘆した。
この淋しい葬儀よ。一人かけても、せつないではないか。しかし孤島からはるばるとヒタ漕ぎに漕いで来たであろう娘を待たせ、孤島に肝臓を病んで医者を待つ病人を待たせ、どうして、ここに止まり得ようか。