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かんぞうせんせい
肝臓先生
「文学界 第四巻第一号」1950(昭和25)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,194 字 · 46 页
「詩なんてものは、時間の意識が長々とした時世に存在したものなんだな。ボクなんかは、ピカドンというような微塵劫的現実に密着しているから、そぞろ歩きに微風を薫じるような芸当はとてもできない」
「まア、いいさ。今に、わかる」
彼は又、咒文をとなえた。
「君がいくらデカダンぶっても、赤城風雨先生の苦難と栄光にみちた一生をきいて、センチにならないはずはないさ。今に、君の涙腺もネジがゆるむから」
彼はせせら笑って、
「これから君を烏賊虎さんのお宅へ案内するが、烏賊虎さんは君をもてなすために酒肴の用意をととのえて待っておられる。伊東市は温泉町ではあるが、半分は漁師町だ。烏賊虎さんは南海の名もない漁師だが、最も深く赤城風雨先生の高徳をしたう点に於て、第一級の人間なんだね。戦争中は赤城先生の病院で人手が足りなくて、手伝いに行って、ズッと臨終の瞬間も見とゞけた最も親しい人だ。三四日君を泊めてくれる筈だから、新鮮な魚をウントコサ食べさせてもらって、赤城風雨先生の話をきくがいいや。君の考えはガラリと変るぜ」
「拙者は烏賊虎さんのところへ泊まるのかね」
「あたりまえさ。君の曲った根性をたたきなおすには、そこへ泊めてもらうに限る」