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かんぞうせんせい
肝臓先生
「文学界 第四巻第一号」1950(昭和25)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,194 字 · 46 页
若い漁師のたくましい筋骨はあげて風浪との闘いに捧げられ、同族に向って手をあげるなぞは思いもよらないことなのだ。平和な、そして、あたたかい町。
朝の三時には、もうホラガイが暗い海面をなりわたる。百人あまりの若い人たちが各々の家からとびだしてくる。彼らをのせた十ほどの小舟が親船にひかれて、走り去る。なんの怒号もなければ、劇的な動作もない。荒天のうねりの高く砕け狂う日も同じことで、平々凡々にでかけて行くだけのことである。大謀網をあげに行くのだ。
同じころ、あるいは、もう一時間早く、近海へ漁にでる棒受け網が出陣する。
烏賊虎さんは棒受け網の小頭で、漁期は連日朝の二時にでゝ、夜の十時に帰る。家でねむることはない。黙って家へ戻ってきて、手拭をとって銭湯へ行き、なんとなく四時間たって、だまって出かけるだけである。彼らが魚に同化する理がわかるであろう。遠洋へ漁にでると、一ヶ月、マグロなら二ヶ月の余も、海の上で暮すのである。せいぜい四十トンぐらいの船。たった四畳半ぐらいの一室で三十人ぐらいの人々が眠るのである。水のほかには自分たちの食物として米と塩を積むだけで精一パイだ。