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のうめんのひみつ
能面の秘密
「小説新潮 第九巻第三号」1955(昭和30)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,440 字 · 35 页
鬼女の面も三ツや四ツはあるでしょうね」
「焼死体のあった部屋にも鬼女の面があったそうですね」
「あの別館には高価なものはおかないはずですが、何かそのような物があったかも知れません」
そこへ来客があったので辻は辞去したが、反対側の長屋に住んでいる爺やのところへ立ちよってアリバイをただしてみると、
「私は九時から十二時まで八百屋で将棋をさしていましたよ。ゆうべのことだから八百常にきいてごらんなさい」
八百常にただしてみるとこのアリバイはハッキリしている。八百常の家族も口をそろえて云うのだからまちがいなかった。辻は支社へ戻ると東京へ電話して今井という人物について調査を依頼し、次のような意味の原稿を送った。
はじめこの事件は過失死か自殺と見られたが、オツネの証言によって乃田夫人がすでに何者かに一千万円ゆすられ、また当夜十時半にも窓を叩いて訪れたゆすりを拒絶している事実が分った。この窓を叩いた何者かが殺人した疑いが濃厚となった。大川は女アンマに肩をもませるにも鬼女の能面をかぶらせるぐらい小心で用心深い男だから、オツネが夫人の部屋にいることを知りながら起きだしてゆすりに行くのはおかしいし、彼がタヌキ寝入りでなかったことはオツネがアンマの感覚と経験によってまちがいないと証言している。