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のうのなかのれいじん
脳の中の麗人
海野 十三
「日の出」1939(昭和14)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,774 字 · 28 页
「いや、女の問題です。じつはこういうわけです」
と、語りだしたところによると、宮川は、手術恢復後、頭の中に一人の女性の幻がありありと見えるようになった。彼はその女性がたいへん慕わしくて、なんとかしてその本人があるなら会いたいと思っていた。ところが、その幻の女こそ、矢部の愛人山崎美枝子だということがわかった。
その美枝子に、宮川はきのうはじめて会った。そして幻の女は、まちがいなくこの女であると確かめた。美枝子もはじめて会った彼に、たいへん熱情をよせた。
彼が矢部のことをたずねたところ、彼女はきっぱりと説明した。
(矢部さんはあたしが大好きだというんです。そしていろいろと自分でも無理算段をしたようですわ。でもあたし、矢部さんがどうしてもすきになれませんのよ)
(でも、さっき、あなたは矢部君をよびとめたではありませんか)
(そうよ。だって、あの人がいろいろ無理をして買ってくれたものがあるんですもの。あたし、それをかえしたいとおもったのよ)
そこで宮川の胸もはれて、美枝子の手をとったというのだ。
そこまではよかったけれど、やがてのこと彼は、美枝子をすっかり憂鬱にさせてしまったというのだ。