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はらのへったはなし

腹のへった話

梅崎 春生

「あまカラ 4月号 第六十八号」甘辛社、1957(昭和32)年4月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,392 字 · 3 页

青空文庫

あの首をちょんとちょん切って、甲羅をはぎ、中の肉を食べたらうまかろうという具合にだ。

艱難の数時間が過ぎ、やっと汽車弁当にありついたのは、午後の四時頃で、何と言う駅だったかもう忘れた。どんなおかずだったかも覚えていない。べらぼうにうまかったということだけ(いや、うまいという程度を通り越していた)が残っているだけだ。一箇の汽車弁当を、私はまたたく間に、ぺらぺらと平らげてしまったと思う。

そんなに腹がへっていたなら、二箇三箇と買って食えばいいだろうと、あるいは人は思うだろう。そこはそれ中学二年という年頃は、たいへん自意識の多い年頃で、あいつは大食いだと周囲から思われるのが辛さに、一箇で我慢したのである。一箇だったからこそ、なおのことうまく感じられたのだろう。あの頃のような旺盛な食慾を、私はいま一度でいいから持ちたいと思うが、もうそれはムリであろう。

(うめざき はるお、三二・四)