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じぶんでこまったひゃくしょう

自分で困った百姓

小川 未明

「読売新聞」1920(大正9)年10月6~8日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,540 字 · 4 页

青空文庫

三

三

小春日和の暖かな日のこと、乙は、また甲のところへやってきました。

「甲さん、今年の芋のできは、どんなでございましたか。」と聞きました。

すると、甲は急にしおれたようすをして、

「ねっからだめでした。こんな不できなことはないものです。」と答えました。

乙は、あたりを見まわして、

「それはそれは、私のところもわるいできでしたが、あなたのところは、それ以上わるいようですね。ほんとうにお気の毒なことです。さぞお困りでございましょう。」と、乙はいいました。

「困るにも、なんにも、まるでだめでした。」と、甲は答えて、ひとり心の中で笑っていました。

乙は、明くる日、ざるの中へいっぱいに芋を入れて、甲のところへ持ってきました。

「甲さん、これは、私のところでとれた、こんなにできの悪い芋です。中でいちばんいいのをよって持ってきました。どうか食べてください。」と、乙はいいました

甲は、それをもらってから、さすがに気はずかしい思いがして、倉の中にしまってある芋を、いつまでも外に出すことができませんでした。そして、ついに明くる年になって、やっとそれを出してみますと、すっかり芋は腐っていました。