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じがのあしかせ

自我の足かせ

宮本 百合子

「東京民報」1948(昭和23)年3月31日、4月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,107 字 · 5 页

青空文庫

その自己撞着は、いつも自我の解放、個人の運命の自由な展開ということについて熱心に念願しながら、いざその実行に立たなければならないという時には、きまって何かの影におびえて動かないような理窟を見出して来たことである。

ちょっと見ると不思議に思えるこの現象は、人民戦線時代の文学の論争を見ても明瞭である。社会主義リアリズムの論争についても微妙な特色となっていた。そして今日、またこの苦しい自己撞着が自我の確立の問題についてあらわれている。

わたしたちは率直にならなければならない。わたしたちの求めるものを、真実に求めなければならない。日本と中国の新しい民主主義が歴史の深いたたみ目をもっていて、民主化という一つの言葉の中に、ヨーロッパの二世紀と今日のもっとも前進した民主主義とを包含しなければならないという歴史を否定しないならば、自我の問題も世界史のこの雄大なプログラムにしたがって解決してゆかなければならない。

発展と成長とのおさえがたい力を信じなければならない。夜の間にも動いている歴史を見透さなければならない。人間の愛情を見るとこのことはよくわかる。小さいこどもが歩きはじめたとき、その親やぐるりの人は何といって見るだろう。