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じさつをかうはなし

自殺を買う話

橋本 五郎

「探偵趣味」1927(昭和2)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,685 字 · 16 页

青空文庫

が今日は?

彼は四回目の空腹に襲われることを考えた。此度は最後だと思った。

彼の脳裡は色んな想念に乱れた。秋の展覧会や、多くの紳士淑女や、かと思うと暗いしるこ屋の一隅や、鉄道の踏切やまた母の顔や見も知らぬ恋びとの姿や、ちぎれちぎれのそれ等の情景は、皆悲しい色彩をもって明滅した。

とふと、彼の視界を黒い物が動いた。石塔の間を音もなく行く、それは確に人間の姿だ。しかも若い男だ。気が付かなかったが、それまで石塔のひとつに腰かけていたに違いない。影はそろそろと歩いて行く。

「飯を食わせろ」

そう云って飛び付き度いような親しさを彼は感じた。不思議に友人か何かのように考えられた。彼の両足は何と云う意味もなく、相当の間隔を保ったまま、その青年と同じ歩調で同じ方向へ歩いて行った。

青年は墓場をぬけて、破れ塀に添うた小路を丘陵に向って歩いた。首を垂れて影のように歩いた。

幾時頃であったろうか、もうあたりはすっかり暗くなってともすれば視界が失われたりするのだった。彼が丘陵と見たのは鉄道の土手であった。○○○○○○○○○○○○○○ものを左下に見た時、彼は、何故か来てはならない処へ来たような気がした。