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しぜんのめぐみ
自然の恵み
中谷 宇吉郎
――少国民のための新しい雪の話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,154 字 · 19 页
こういう状態の水、即ち零度以下でも液体の状態になっている水を、過冷却の水という。冬の空をおおっている灰色の雲は、ほとんど全部この過冷却の水滴から出来ている雲である。即ち雨雲である。ところでこの過冷却の水は、氷にふれるとすぐ凍る性質があるので、雪の結晶にこの雲の粒がふれると、すぐ凍りつくのである。こういう雲の厚い層があって、その中を雪の結晶が降って来ると、沢山の雲粒が、上へ上へと凍りついて、だんだん塊状になる。とくに立体的の雪に、沢山この雲粒がつくと、氷粒の塊になる。それが霰なのである。霰が秋の末から冬の初めによく降るのは、うんと高いところで雪が出来、下の方に厚い雲の層があるからである。それに上昇気流といって、大気中に空へ昇る流れがあると、雪が落ちるのに長い時間かかるので、霰が出来易い。冬の初めには、この上昇気流がよく起るのである。
もう一度外套の袖に戻ろう。非常に寒い時には、粉雪が降る。ここでいう粉雪は、スキー家たちが、いい粉雪だったというあの粉雪のことではない。スキー家たちのいう粉雪は、地面の上につもった雪がさらさらしているという意味である。