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しぜんびょうしゃにおけるしゃかいせいについて

自然描写における社会性について

宮本 百合子

不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,820 字 · 12 页

青空文庫

そしてまた、フョールドばかりを眺めて育った人がナポリに来てうける感動の強烈さは、おそらくナポリに生れてそこでばかり成長したものの心持では、おしはかれぬものがあるだろう。暗くて寒いドイツ生れのゲーテが、あれほど大部なイタリー紀行を書いた秘密の一つは、彼が古典芸術へ深く傾倒していたことのほかに、こういう微妙なところにもある。ロシアのように広大な国土のところでは、一口にロシアの詩人、作家といっても、黒海沿岸、南露の詩人の気質・表現と、半年雪に埋もれ原始密林を眺めているシベリア地方生れの詩人、作家の気質・表現とは、その扱う題材がちがうように、著しい相異がある。

セラフィモヴィチという作家の書いた「鉄の流れ」は日本訳もあって、多くの人々に愛読された作品であるが、その横溢的用語、色彩のつよい表現、強くて大きいリズム、叙事詩的形式などは、いかにも彼が南露のコサック生れであることを物語っている。同じ時代に発表されたロシア作家の作品でも、「赤色親衛隊」などのもっている諸要素は、セラフィモヴィチと全く反対の調子のものであり、作者フールマノフの南方的でない気質を示していることが見られるのである。