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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
それも違っていた。ときによれば守衛までハッキリむこうに廻るのだ。そのために雇われているのだ。
考えているうちに、ミサ子は切ない緊張した心持になって来た。頭の中で、何かカラクリがじりじりと一まわりしかけている。これまでうっかり見そこなっていた自分たち女事務員、勤人の生活の本体というものがわかって来そうな工合だ。
ミサ子は、思いが凝って上気せ、少し恰好のかわった奇麗な一重瞼をあげて、何ということなく、たべあらした膳ごしにテーブルのむこう端にいる柳の方を見た。
柳はいつものふっくら落着いた顔つきで、余り喋らずおだやかにミサ子を見ている。が、ミサ子はその眼差しから今は特別自分の心持に相触れる何かを感じた。
やがて、柳が、
「みなさん、どうオ」
と、持ち前のゆっくりした口調で云いながら椅子をどけて立ち上った。
「お天気がいいから、また四十分ピクニックやらないこと?」
「賛成!」
「私丸菱へ行かなくっちゃ」
ミサ子を入れて十人ばかりが、柳のゆれている濠端へ出て、初秋の日向を日比谷公園の方へ歩いて行った。昼休みが一時間ある。四十分ピクニックもいつとはなしはじまって、一月に二度ぐらい、日比谷公園の池の畔へ出かけたり、芝生で休んで来たりするのだ。