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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

「……ああア、また草履も買わなくちゃならないし」

と、泥水がしみてきたなくなった藤色の草履を眺めて云った。

「鼻緒なんか、でも新しいようじゃないの」

「ええ、本当なら買ってまだいくらもたちゃしないのよ。こないだおひるっからひどく雨が降ったときがあったでしょう。私がちょいとツンツンしたって、あの雨ん中をわざと傘がないのに集金にやらされたんだもの……たまりゃしない。――」

神田駅で別れて省線にゆられながら、ミサ子はみどりの口紅のあとの残ったストローの色を目にうかべた。

今夜の話で、然しミサ子たち××○○会社の女事務員がブツブツ云いながら結局納まっているいろいろのわけがハッキリしたように思えた。

××○○会社には女事務員でも、支店からまわって来たりしてかれこれ七八年勤めている人が一人二人いた。この不景気でもクビきりをやたらされないという安心が、ひとつは××○○会社の女事務員たちを引込思案にさせている原因だ。

七

その日は朝っからまるでいそがしかった。やっと暇をみてミサ子が洗面所へ行こうとすると、むこうから靴音を立てて庶務の沖本がセカセカ小使とやって来た。