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はなこのちんじゅつ

花子の陳述

豊島 与志雄

「別冊文芸春秋」1952(昭和27)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,726 字 · 22 页

青空文庫

その晩、良吉さんは全く泥酔しておりました。母から聞いたところでは、よろよろとはいって来て、玄関の土間に腰を落ちつけてしまいました。母から援け起されると、案外しっかり立ち上り、両方のポケットから、宝焼酎の瓶詰を一本ずつ、つまり二本取り出して、上り框に並べ、おばさん、どうです、と嬉しそうに笑いました。

それから二階に上りかけましたが、突然立ち止って、母に言いました。

「美津子のやつ、いろんな下らないことをおばさんに饒舌ってるようですが、一切取り合わないで下さいよ。あいつはばかですから、相手になってやると、増長していけません。これから一切、何事も取り合わないで下さい。頼みますよ。」

母には何のことだかよく分りませんでしたが、悪いことでもして叱られてるようで、心外だったそうです。

その晩はそれきりで、良吉さんもすぐに寝こんだ様子でした。それから翌朝、たぶん昨夜の焼酎でしょうが、良吉さんはまた飲み初めて、いつもより遅く、酔った足取りで出かけて行きました。

それから、正午近い頃、わたくしが昼食の仕度をしておりますと、階段の方に、ただならぬ大きな物音がしました。