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はなたばのむし
花束の虫
大阪 圭吉
「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,893 字 · 36 页
バッテリーであった事、そして又、夫人は案外にもあれでなかなかの好色家である事等を知る事が出来た。――で以上の材料と、僕の貧弱な想像力とに依って、最後に、犯罪の全面的な構図を描いて見るとしよう。……先ず比露子夫人は、岸田直介との結婚後、以前の情夫である上杉に依って何物かを――それは、例えば、恋愛の復活でもいいし、又何か他の物質的なものでもいい――兎に角強要されていた、と僕は考えたい。そして上杉は、その脅喝の最後の手段として、好色な夫人の現在の非行を暴露した『花束の虫』を、瑪瑙座に於ける新しい自分の地位を利用して、直介の処へ持って来たのだ。勿論、夫人は凡てを知っていた。そして、いま、裕福な自分の物質的な地位の上に刻々に迫ってくる黒い影を感じながら、この一両日の間と言うものは、どんなにか恐ろしい苦悩の渦に巻き込まれていた事だろう。其処では、恰度イプセンのノラが、クログスタットの手紙を夫のヘルメルに見せまいとする必死の努力と同じ様な努力が、繰返されたに違いない。――だが、結果に於て夫人はノラよりも無智で、ヒステリカルであった。昨日の朝になって、多分夫人は、これ等の奇抜な季節違いの装束を身に着けると、『花束の虫』