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かしょく

花燭

太宰 治

1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,501 字 · 38 页

青空文庫

おまえに責任は無い。あとは、おまえの自由じゃないか。なんだ、ばかばかしい。」散々の不気嫌であった。

「ええ、それが、」淋しそうに笑って、少し言い澱んでいたが、すっと顔をあげ、「あたし、結婚しようかと、思っていますの。」

「いいだろう。僕の知ったことじゃない。」

「は、」とみは恐れて首をちぢめた。「あの、それに就いて、――」

「さっさと言ったらいいだろう。おまえは一たい僕をなんだと思ってんだい。むかしからおまえには、こんな工合に、なんのかのと、僕にうるさくかまいたがる癖があったね。よくないよ。僕には、からかわれているとしか思われない。」むやみに腹が立つのである。

「いいえ。決してそんな。」必死に打ち消し、「お願いがございます。ひとつ、弟に説いてやって下さるわけには、――」

「僕が、かい。何を説くんだ。」

とみは、途方にくれた人のように窓外の葉桜をだまって眺めた。男爵も、それにならって、葉桜を眺めた。にが虫を噛みつぶしたような顔をしていた。とみは、ちょっと肩をすくめ、いまは観念したかおそろしく感動の無い口調で、さらさら言った。弟が、何かと理窟を言って、とみの結婚に賛成してくれぬ。