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げいじゅつがひつようとするかがく
芸術が必要とする科学
宮本 百合子
「都新聞」1936(昭和11)年7月3~6日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,183 字 · 12 页
音楽にしてもそうである。鉄工場に働いたり、あるいは酸素打鋲器をあつかっている労働者、製菓会社のチョコレート乾燥場などの絶え間ない鼓膜が痛むような騒音と闘って働いている男女、独特な聴神経疲労を感じている電話交換手などにとって、ある音楽音はどういう反応をひき起すか、どういう音の調和、リズムが快く受けられるであろうか。
感覚的な芸術である美術や音楽の領域の開発のためには、どれほどこういう実験的資料の蒐集が必要であろかということは想像される。ソヴェト同盟は新しい社会的土台において諸芸術をめざましく開花させたが、各部門の発達のテンポを見ると、文学、演劇が一番早くある水準に達した。音楽、美術はそれよりおくれたという実際の経験がある。騒音の激しい、人のざわめき、声々の多い場所で働いている者は、あるいは文学の愛好者となる率が多いのではないかとも思われる。(ソヴェト同盟で文学が新しい芸術建設の先鋒となったことは、もちろん、人々をして記録させ、ペンをとって書かせずにおかなかった社会生活の複雑な大変動、大感動が中心的な動機となっていたのであるが)
日本詩歌のリズムの研究が、メトロノームの搏音をつかっての心理学的実験によってなされたことは、この方面において若い心理学徒の多くの業績が期待され得ることを意味すると思う。