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わかきひのジンギスカン
若き日の成吉思汗
林 不忘
――市川猿之助氏のために――
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 33,827 字 · 68 页
札木合 (募り来る不安を隠し)なに、荒鷲だと?――それから、あの、それそれ、第三陣に、灰色の狼のごとく、砂煙りを上げて馬を駆って来るのは?
参謀四 はっ。あれぞ総大将成吉思汗の弟、合撒児でござります。武芸並ぶ者なく、ことに、強弓衆に優れ、矢面に立つもの必ず額を射抜かれると申すこと。人々彼を怖れて、蟒と綽名いたす強の者です。
札木合 (遂に恐怖を押さえきれず)大海の捨て小舟のようなこの山寨だ。逃げようにも逃げられぬ。
台察児 (足摺りして)ええい! 皆がみな敵を賞めくさりおって! 揃いも揃って臆病神に取り憑かれたか。兄上! もはやこれまでです。城を出て、塔米児の河畔に決戦いたしましょう。どうぞこの台察児に、三百でも五百でも、ありったけの城兵をお貸し下さい。
札木合 (すっかり怖毛立って)いや、貪る鷹のような成吉思汗軍のいきおいだ。成吉思汗は、総身銅のように鍛えられ、土踏まずや腋の下にさえ、針も通らぬというではないか。一睨みで、虎をさえ居竦ませると言うではないか。(と恐怖に眼を覆い、たじろく)
砦の下から伝令一人、石垣をつたわって上ってくる。
伝令 申し上げます。