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わかきひのジンギスカン
若き日の成吉思汗
林 不忘
――市川猿之助氏のために――
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 33,827 字 · 68 页
(長い間)
合爾合姫 (寝台から成吉思汗を見つめながら、半身を起して)成吉思汗! なにしに妾をここへ呼んだのです。
成吉思汗 このおれの心は、誰も知らない。誰も知らない。銀の鱗と騒ぐ斡児桓と塔米児の川波が、知っているばかりだ。うむ? (合爾合の問いに気づき)何のために、あなたをここへ呼んだ? ははははは、それは、朝になればわかるだろう。僕はここで、一晩中あなたをお守りする。成吉思汗を信じて、ゆるゆるお眠みになるがいい。
寝台の傍の猛虎が、いきなり凄い唸り声を発する。
合爾合姫 おお怖い! この虎をあっちへ連れて行って下さい。でも、砂漠の虎成吉思汗よりも、妾にはこの虎のほうが、まだ安全かも知れませんわね。
成吉思汗 月が照ると、こいつは故郷の山を思いだして、吠えるのです。木華里! 木華里はいないか。
天幕の入口に、巨漢木華里が現れる。
成吉思汗 あはははは、木華里、われわれの結婚の夜の邪魔をするのは、この心ない太陽汗だよ。連れて行ってくれ。
木華里は、長い鞭をふるって虎に近づき、大きく床を打つ。
木華里 さあ、出て失せろ。乃蛮の太陽汗め! (鞭の音唸る。猛虎は怒って、跳びかかりそうな敵意を示す)