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わかがえりぐすり
若返り薬
海若 藍平
「九州日報」1923(大正12)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,023 字 · 6 页
恐る恐る丸薬を拾って家へ駈け込んでみますと、いつの間にかお祖父さんがお帰りになって、火鉢にあたっておいでになります。
太郎さんは紙に包んだ三粒の赤い丸薬をお祖父様の前へ置いて、最前からの話をして、ふるえながら泣いてあやまりました。
太郎さんのお父様やお母様も、太郎さんの泣き声を聞いて何事かと思って出て来られましたが、太郎さんのお話しを聞くと笑いだして、太郎さんの背中を撫でながら、
「何を言うのだ、太郎さん。そのお薬はお祖父様が町から買っておいでになった、風邪引きの薬のお余りではないか。もう古い古い事だから利かなくなっているのかも知れない。それを若返りの薬だなぞと、お前は狐につままれているのじゃないか」
と腹を抱えて笑いころげられました。しかしその中でお祖父様だけは笑われずにこう言われました。
「それは太郎の云うのが本当であろう。どんな小さなものでも間違ったしかたで使う事がどんなに悪い事であるかという事が、太郎にだけ本当にわかったのだ。他のものは皆嘘と云っても、太郎だけ本当と思えば、それでいいではないか」