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ちゃがゆのき

茶粥の記

矢田 津世子

「改造」1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,568 字 · 30 页

青空文庫

西尾は喉を鳴らして茶を飲み、顎の筋肉をビクビク動かして菓子鉢の落雁を口卑しく平げる。

「これも運だと思ってあきらめているすてえ。なあ、西尾さん、うちの倅あ、あの通り食い意地張ってたもん、あの世さ行っても腹コ痛くなるだけ御馳走食べているこったべしちえ。こんど生れてくるとき、土産コうんと持ってきてもらわねえば、間尺にあわねえすてえ」

茶を注いでやりながら姑はつぶつぶの光った眼で西尾を見あげて笑った。

「そうだとも、おっ母さん。今頃は先生食い放題だな」

西尾は年寄りの顔から眼を逸らして、無暗と茶を飲んでいたが、清子が上ってくると声をかけた。

「奥さん、田舎さ帰ったら当分はお寂しいこってしょうね。なかなか東京が忘れられませんよ」

「何しろこちらが長いんですものね。でも田舎へ帰ると子供相手ですから、まぎれますわ」

「ああ、それじゃ学校のほうお決まりですか」

「助役さんにお願いしてありますから……それに校長先生からも大丈夫だってお手紙いただきましたから」

「あの校長さんは親切だからなあ。僕は、高等科で教わったが……赤髭コって渾名でね、先生よく水っ洟をチカチカ光らせてやって来たもんだ」