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ちゃがゆのき

茶粥の記

矢田 津世子

「改造」1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,568 字 · 30 页

青空文庫

炭不足の話が出る。酒が手に入らぬ話が出る。菓子を買うのに行列の中に入って一時間以上も立ちん棒をした話が出る。けれども物資不足からくるこの頃の切り詰めた生活の簡易さは、この役所に勤めているほどの人たちには今更こと新しく取り立てるまでもなく、結局、慣れた手頃な暮しなのだった。

向い側の寄留係りはよく飽きもしないで煮豆を詰めてくる男だったが、女学校へ行っている娘があって、それが弁当の世話をするらしい。思いがけず玉子焼が入っているときなど、風のあがらない薄髭をにやにやさせて蓋に一と切れのせて、こっちへも勧めてよこした。食べ物の話がはずんだ。鯨の赤肉の栄養価値を説くものがあった。カツレツにして食べると結構牛肉の中どころの味が出るという。値が安く鱈腹食べられるというので、なかなかの人気だった。良人の味覚談義がはじまるのはこんなときである。

「鈴木さんのように舌の肥えている人にかかっちゃねえ」

役所の中で良人は食通として定評があった。聞き手たちは良人の話からまだ知らぬ味わいをいろいろに引き出しては、こっそりと空想の中で舌を楽しませる。

「この頃の牡蠣の旨いことったら、どうです。