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ちゃいろっぽいまち
茶色っぽい町
宮本 百合子
「読売新聞」1925(大正14)年10月26日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,087 字 · 8 页
ときいた。
「よほど先へ行ったから、あの交番のところでどっちへ行ったか分らないわ――でも、きっと明るい方よ、賑かな方へ行ったに違いなくてよ」
私は、確信をもって云った。
「そういうたちよ」
「――誘う水あらば、いなんとぞ思う――?」
「ふむ」
幾分陰気になって、我々は山伏町の通りへ曲った。九時前後で、まだ人出は減っていない。夜店のアセチリンガスの匂いが、果物や反物の匂いと混っていた。赤や白のビラがコンクリイトの上に踏躙られた活動写真館の入口に、
「只今より割引」
という札が出ていた。七八人の男女が表に出ている写真を看ていた。通りすぎようとすると、友達が、
「一寸」
と私の腕を控えた。
「この麻雀というの、こないだの蜂雀の真似じゃあないこと――そうだ、滑稽だな、澄子の麻雀とは振っている。一寸立ち見をしないこと」
私は、日本映画は嫌いなのだが、蜂雀を麻雀とこじつけた幼稚なおかしさや、澄子がどんなに真似をするのかという好奇心に釣られた。垂幕をあげて入ると、中は満員であった。やっと、二人が立つと、すぐ麻雀が始まった。蒲田で、澄子その他が麻雀をして遊んでいると、その遊戯を知らない何とか君という、ひどく太い眉毛の若者が傍のソファで仮睡をし、夢で女賊マジャーンに出会するという筋なのだが――マジャーンが、スワンソンの蜂雀通りの扮装でスクリーン