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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
永井荷風『荷風随筆集(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葛飾土産、鐘の声、銀座、里の今昔、寺じまの記、伝通院、夏の町、日和下駄、深川の散歩、放水路、水のながれ、向嶋、向島、元八まん、霊廟。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,224 字 · 269 页
今日上野博物館の構内に残っている松は寛永寺の旭の松または稚児の松とも称せられたものとやら。首尾の松は既に跡なけれど根岸にはなお御行の松の健なるあり。麻布本村町の曹渓寺には絶江の松、二本榎高野山には独鈷の松と称せられるものがある。その形古き絵に比べ見て同じようなればいずれも昔のままのものであろう。
柳は桜と共に春来ればこきまぜて都の錦を織成すもの故、市中の樹木を愛するもの決してこれを閑却する訳には行くまい。桜には上野の秋色桜、平川天神の鬱金の桜、麻布笄町長谷寺の右衛門桜、青山梅窓院の拾桜、また今日はありやなしや知らねど名所絵にて名高き渋谷の金王桜、柏木の右衛門桜、あるいはまた駒込吉祥寺の並木の桜の如く、来歴あるものを捜むれば数多あろうが、柳に至ってはこれといって名前のあるものは殆どないようである。
隋の煬帝長安に顕仁宮を営むや河南に済渠を開き堤に柳を植うる事一千三百里という。金殿玉楼その影を緑波に流す処春風に柳絮は雪と飛び黄葉は秋風に菲々として舞うさまを想見れば宛ら青貝の屏風七宝の古陶器を見る如き色彩の眩惑を覚ゆる。けだし水の流に柳の糸のなびきゆらめくほど心地よきはない。