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かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

永井荷風『荷風随筆集(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葛飾土産、鐘の声、銀座、里の今昔、寺じまの記、伝通院、夏の町、日和下駄、深川の散歩、放水路、水のながれ、向嶋、向島、元八まん、霊廟。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,224 字 · 269 页

青空文庫

捕物の場で打出し。お神さんの持って来た幸寿司で何も取らず、会計は祝儀を合せて二円二十三銭也。芝居の前でお神さんに別れて帰りに阿久と二人で蕎麦屋へ入った。歩いて東森下町の家まで帰った時が恰度夜の十二時。

かつて深川座のあった処は、震災後道路が一変しているので、今は活動館のあるあたりか、あるいは公設市場のあるあたりであるのか、たまたま散歩するわたくしには判然しない。

むかしの黒江橋は今の黒亀橋のあるあたりであろう。即ちむかし閻魔堂橋のあったあたりである。しかし今は寺院の堂宇も皆新しくなったのと、交通のあまりに繁激となったため、このあたりの町には、さして政策の興をひくべきものもなく、また人をして追憶に耽らせる余裕をも与えない。かつて明治座の役者たちと共に、電車通の心行寺に鶴屋南北の墓を掃ったことや、そこから程遠からぬ油堀の下流に、三角屋敷の址を尋ね歩いたことも、思えば十余年のむかしとなった。(三角屋敷は邸宅の址ではない。堀割の水に囲まれた町の一部が三角形をなしているので、その名を得たのである。)

今日の深川は西は大川の岸から、東は砂町の境に至るまで、一木一草もない。