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さやえんどうのむし

莢豌豆の虫

佐藤 垢石

「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,556 字 · 3 页

青空文庫

翌朝、水楢の林へ行った。けれど、水楢の枝は高いところにあって、手が届かない。やむを得ないから、手の届くところの青葉の草むらへ分け入って、青虫を捜しまわった。しかし保護色を持っている青虫は、一匹も私の眼にとまらなかった。青い葉に、青い小さな虫が這っているのであるから、発見できぬのが当たり前であろう。

その日は、やはり川虫とみみずで釣った。

家へ帰ってきてからも、いろいろ考えた。青虫で渓流魚を釣れば、必ず成績があがるに違いない。なんとかして、手に入れる方法はないものかと、思案したのであった。

ところが、ある朝、家の東方にある畑へ莢豌豆の実を採りに行って、蔓から豆をもぎとっていると、その葉に一分五厘から二分くらいの青虫が這っているのを偶然にも発見したではないか。

なおも仔細に、莢豌豆の根方の、こんもりとした葉の数々を裏返してみると、そこに無数に青虫がいるのを見つけた。私は、狂喜したのである。

その青虫を持って、私は再び山へ登った。果たせるかな素晴らしい成績であった。釣り人が餌を捜すということも、釣りの趣味のうちの一つである。

家にいて道具をひねくりまわすことも、釣りの夢をみることも、釣りの本を読むことも、釣りの趣味のうちの一つであろうと思う。