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らくご・きょうそれつでん
落語・教祖列伝
04 飛燕流開祖
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,245 字 · 25 页
「へ。どうも。お待ちどう。しばらくでござんす」
と云って、鼻介が刀と刀の間へわってはいると、悪侍の親玉は目をむいて、
「なんだ。キサマは」
「へ。左様でござんす」
「何者だ」
「へ。豆腐屋でござんす。コンチは御用はいかがで」
「コノ無礼者め」
悪侍の親玉はカンカンに立腹して抜く手も見せずと云いたいが、もうチャンと抜いている。そのままの位置では斬るにも突くにもグアイの悪いところへ鼻介が立っているから、エイッとふりかぶって一刀のもとに鼻介を斬り伏せようとする。とたんに後へひッくりかえって、刀をふりあげたまま、ドタリと倒れてムムムとのびてしまった。鼻介の足が急所をチョイと蹴ったのである。
のこった十名の悪侍が、生意気な下郎めと刀を抜き放って迫ったから、十人にとりまかれては一大事。アバヨ、と逃げる。その足の速さは青梅村の百兵衛だって遠く及ばない。そのころはオリムピックがなかったから仕方がないが、百米からマラソンまで鼻介の記録を破る者は今でもいないというほどのイダ天である。けれども、そう離しては相手がついてこないから、切先から五六寸だけ間をもたせて鬼ごっこをする。名人になると全身に鉄を感じる作用がそなわるから、後を見なくても敵の刀の位置がわかるのである。