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らくご・きょうそれつでん

落語・教祖列伝

坂口 安吾

03 花天狗流開祖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,667 字 · 30 页

青空文庫

地面へ落っこッて、身体がクルクルまわったと思ったのは、アネサの目がまわっただけだった。アネサは五六間ケシとんだ場所へ、気を失って、ぶッ倒れて、全然うごかなかったのである。

ミコサマのナギナタの手錬は驚くべきものであったのである。しかし、庄屋と馬吉のオカカには、それがハッキリのみこめなかった。ミコサマのナギナタが手もとでクルッと廻って流れて、何かチョッとなんでもないようなことがあっただけだ。アネサがバカのようにスッとんだだけのことであった。

「なんたる手錬。なんたる気合。その静かなること林の如く、動起って雷光も及ばず。これは大変な掘り出し物だ」

家老は呆れて、それからようやく驚いて、それからようやく感心して、それから我にかえった。

彼はさッそくミコサマを城へつれて行って殿様に披露した。真庭念流の石川淳八郎が立合ってみると、とても、とても、問題にならない。もともと、ナギナタと刀では、現在の剣士に立合わせても、女の子のナギナタの方が勝つ公算が大きいのである。しかしミコサマの手錬は話の外だ。

直ちに召抱えられてナギナタ師範になる筈であったが、天狗様の神事をうッちゃるわけにいかないから、ミコサマの職のまま村に止ることになり、心ある武士の娘が出かけて行って習うことになったのである。