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ヒューネラル・マーチ

葬送行進曲

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1931(昭和6)年4月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,494 字 · 25 页

青空文庫

悲歎に暮るる人達を遠退けて、丁寧に診察しましたが、病気は心臓麻痺、死亡時間は夜半の二時頃、という以上には何んにも判りません。十三歳の少年が夜中に寝台の上で心臓麻痺を起すのは不思議と言えば不思議ですが、外に病名の付けようが無いとすれば、それを信じないわけに行きません。それに、日頃虚弱で、腺病質の見本見たいな子でしたから、夜中に急死したと言っても、誰も疑を挟むものはありません。

子供の事でもあり、翌る日は告別式を済ませ、その日の夕刻、直ぐ火葬場へ持って行くことになり、十三歳になった一つの生命の始末が、何んのこだわりもなく、トントン拍子に片付いてしまいそうに思われましたが、その日の夕刻、思いもよらぬ事件が起って、このプログラムがすっかりこわされることになってしまいました。

それは、所轄警察署から、一応死骸を検屍さして貰い度いと言って、司法主任と刑事二人、警察医を伴れてやって来たのです。

父親は名誉も地位もある実業家で、酒巻ドクトルの死亡診断書にも手落は無かった筈ですから、通例こんな事は無いのですが、何分所轄署へ重大な密告書が、速達郵便で舞い込んで来たので、其儘捨て置くわけには行かなかったのです。